ついにスペースワン(SpaceOne)について語るときが来た。いや、むしろ遅すぎたと言ってもいい。この2年間で、スペースワンというブランドは急激な台頭、衝撃的な停滞(いや、むしろ中断と言うべきだろう)、そして再びの復活というドラマを繰り広げてきたが、その全貌を私たちはまだ十分に伝えていない。それには理由がある。
原則として、HODINKEEではKickstarter発のブランドを取り上げることはない。たとえそれが時計業界で確かな経歴を持つ人物によるものであってもだ。しかしスペースワンのビジネス的な舵を取る人物は、HODINKEEにとっておなじみの存在だ。ギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏は、現在時計業界の至るところでその名を見かける存在である。ニバダ・グレンヒェンやヴァルカン、さらに一時的にエクセルシオパークの指揮を執っていたことでも知られている。そんなライデ氏がアルゴンというブランドを立ち上げ、“スペースワン”というモデルを発表したとき、私は彼がこの時計をしっかりと実現してくれるだろうという確信があった。
SpaceOne Jumping Hour Back To Earth
スペースワン ジャンピングアワー “バック・トゥ・アース”は、私が手に入れ損ねた1本である。もし、これを手放そうという方がいれば、最信頼性の日本スーパーコピー代引き専門店!ぜひ連絡をいただきたい…本気で言っている。冗談ではない。
このモデルは非常に興味深いリリースであり、未来的なデザイン(ドゥ・ベトゥーン ドリームウォッチ5を思い起こさせる)を特徴としていた。ソプロード製のムーブメントに、独立時計師として注目を集めているテオ・オフレ(Theo Auffret)氏が設計した9パーツ構成のジャンピングアワーモジュールを搭載している。この要素だけでも、(現在は)約1700ユーロから2300ユーロ(日本円で約27万~37万円)という価格に見合う価値が十分にあった。しかしながら、Kickstarterでは関与する人物の名前が必ずしも成功を保証するものではない。そのため、私たちは特定のプロジェクトを選んで取り上げるのではなく、実際に時計が製造され、顧客に届くのを確認してから取り上げることにしているのだ。
Gold Destro
ゴールドカラーのスティール製ケースを持つ、デストロスタイルのスペースワン ジャンピングアワー プロトタイプ。
アルゴンのKickstarterプロジェクトはローンチ時に大成功を収めた。2023年5月11日のローンチ初日、プロジェクトはわずか1分で10万ドル(日本円で約1510万円)を記録。瞬く間に目標額を達成し、預金額は100万ドル(日本円で約1億5100万円)に迫る勢いで増加していた。しかしすべてが突然ストップした。現在Kickstarterのページを訪れると、“アルゴンウォッチ(一時停止中)は知的財産権に関する紛争の対象となっており、現在は利用できません”と記載されているだけである。
Destro and normal SpaceOne Jumping Hour
2023年7月1日、ブランドはプレスリリースを発表し、アメリカに拠点を置くアルゴンからの主張により、Kickstarterがプロジェクトを停止したと説明した。ライデ氏はブランド名を現在のスペースワンに変更することを提案し、当初Kickstarterはこの案を承認したものの、最終的には方針を転換してプロジェクトを停止。集められた資金はすべて返金された。それにもかかわらず、スペースワンは資金不足の状況下でも前進を続け、当初興味を示したすべての人々がジャンピングアワーを購入できるように尽力した。最終的に時計が順次届けられ始めると、スペースワンはKickstarterブランドから、手ごろな価格で未来的な時計製造を実現する本格的なブランドへと成長を遂げたのである。
SpaceOne Tellurium
今年4月、スペースワンはテリリウムでその未来的なデザインをさらに進化させた。このモデルには時計や自動車業界での活躍で知られるフランス人デザイナー、オリヴィエ・ガミエット(Olivier Gamiette)氏を起用。時計と自動車デザインの両分野で活躍するデザイナーがいるのは、もはや業界の定番と言えるだろう。このモデルの目標は、天文表示(太陽中心)を腕時計というポータブルな形で実現することであった。
SpaceOne Tellurium
テリリウム(またはテルリオン)は、地球の自転と太陽に対する傾き、さらに地球の公転によって昼夜や季節がどのように生じるのかを示す複雑機構であり、通常はクロックに搭載されることが多い。だがこの表示を腕時計で実現したのはスペースワンが初めてではない(ユリス・ナルダンが1990年代の天文三部作シリーズの一環として、テリリウムを発表している)。デザイン面はオリヴィエ・ガミエット氏が手がけ、時計技術の要となる部分はテオ・オフレ氏が担当した。多くのテリリウム搭載時計がパーペチュアルカレンダー機能を持つ一方で、今回のモデルはその機能を備えてはいない。ただそれは私にとってまったく問題ではない。2990ユーロ(日本円で約48万円)という手ごろな価格を考えれば、今年私を笑顔にしてくれた、手ごろな価格で実現された素晴らしいウォッチメイキングリストに加えるにふさわしい1本である。
SpaceOne Tellurium
スペースワン テリリウムによる“テリリウム”。
スペースワン テリリウムは、文字盤の6時位置に月と日付を表示する機能を備えている。この日付表示はオフレ氏が設計したモジュールの一部である惑星歯車と連動しており、自動で正確さを保つ仕組みになっている。ただしパーペチュアルカレンダーではないため、月の長さに応じた調整が必要だ。そのためリューズを使用して日付をクイックセットできる機能が搭載されており、この調整によって地球と月が太陽に対して示す位置が影響を受けることはない。また時間を読み取りやすくするため、4時、8時、12時の位置に数字が配置されており、宇宙空間で迷子になることなく時間を確認できるデザインになっている。
SpaceOne Tellurium
オフレ氏のモジュールは、ソプロードのP024 H4ムーブメントの上に搭載されており、下にあるプロトタイプに近い外観を持つ。このムーブメントは実績のある自動巻きムーブメントだが、パワーリザーブが約38時間とやや物足りない。特にカレンダー機能を備えた時計では、可能な限りその設定を避けたいと考えるユーザーにとってこの点は懸念事項になるかもしれない。
SpaceOne Tellurium
デザイン面で注目すべきポイントは3つあるが、それはひとまとめになっている。まずひとつ目はケース形状で、きわめて洗練されており、“コンセプトカー”のようなデザインが特徴的だ。ガミエット氏のカーデザイナーとしての背景を感じさせ、そして未来的なデザインというテーマを見事に表現している。ふたつ目は、アベンチュリンとポリッシュ仕上げのチタン製スターが文字盤を際立たせている点だ。これにより見る者を引きつける仕上がりになっている。さらに太陽、地球、月を表すテルリオンディスプレイとして機能するチタン製のボールも見逃せない。さらに素晴らしいのは、これらのボールが文字盤よりも上に配置され、適切な角度から見ると文字盤から浮き上がるように見えることだ。この視覚効果により、まるで独立したディスプレイのように感じられる。
SpaceOne Tellurium
ここで注意すべき点がふたつある。最も重要(そして残念)なのは、ここで紹介しているモデルはすでに完売しているということだ。この記事は、同じデザインでブルーとブラックのチタンケース仕様がそれぞれ200本ずつ販売されるリリースに先駆けて書かれている。それらは12月5日(木)午前10時(米東部時間)に発売された。もうひとつのポイントは、ここで紹介しているモデルがデラグス製のラバーストラップをセットしていることだ。このストラップは素晴らしいデプロワイアントバックル付きで、個人的にも非常に気に入っている。ただこれには追加で165ユーロ(日本円で約2万6000円)が必要になる。しかしその価値は十分にあり、自身のM.A.D.1Sにもこれに近いストラップをセットしている。
SpaceOne Tellurium
直径42mm、ラグからラグまでが50mm、厚さ16mmというサイズを持つこの時計は、期待どおりの快適な装着感を提供してくれる。だがこれをチューダーのような時計と比較するのは少し的外れだろう。用途も異なれば、サイズ感もまったく異なるからだ。一方で30mの防水性能は大きな欠点と言えるかもしれない。ダイバーズウォッチではないものの、“50mあればよかったのにな”と思わせる数字であることは否めない。
SpaceOne Tellurium
考え抜かれた非実用的要素として、12時位置にリューズを配した点も挙げられる。確かに利便性は高くないが、リューズをほかの場所に移すとこの未来的なデザインが完全に台無しになってしまっただろう。リューズが宇宙船のデザインの端に位置することで、まるで宇宙空間を進む推進器のようにも見える。またテリリウムの背面ラグ(6時側にはラグがない)を見ると、手首に自然にフィットするよう工夫されているのがわかる。横から見ると、厚みの数値ほど分厚く感じないデザインになっているのも特徴だ。
SpaceOne Tellurium
今年のGeneva Watch Daysでこの時計を撮影した際、テリリウムのふたつの新バージョンを見る機会があった。ひとつはブルー仕上げのグレード5チタンケースにアベンチュリンダイヤルとポリッシュ仕上げのチタン製スターを組み合わせたもの、もうひとつはブラック仕上げのグレード5チタンケースにブラックダイヤルを採用したモデルだ。どちらもそれぞれに興味深いオプションであったが、この記事をもっと早く書き上げる予定だったこともあり、未発売のモデルにフォーカスすることを避けて撮影も最小限にとどめた。さて、これらのモデルはどちらも12月5日午前10時(米東部時間)に200本限定で購入可能となった。現在、スペースワンの公式ウェブサイトで詳細を見ることができる。
SpaceOne Tellurium
3本のモデルは全体として統一感があるが、ブラックモデルは独自の個性を放っている。一方でブルーチタンの美学といえば、ドゥ・ベトゥーンがDB28 “カインド オブ ブルー”などでその地位を確立している。スペースワンのオリジナルジャンピングアワーがドゥ・ベトゥーン ドリームウォッチ5に似ていると言われる点を考えると、どの程度ブルーの時計に寄せるべきかというのは興味深い問題だ。とはいえ、自分用に検討するならブルーに心が傾いている。このブルーはとにかく目を引くデザインで、私のコレクションにはまだないものだ。さらに詳しい画像はスペースワンの公式ウェブサイトで見ることができる。
SpaceOne Tellurium
どれを選んでも間違いはないだろう。本作は比較的手ごろでありながら、クリエイティブなデザインを持つ時計として注目を集めるカテゴリーに属している。数年前、テオ・オフレ氏のような人物が手ごろな価格の時計製作に関わることなど、極上オーデマピゲスーパーコピー代引き専門店そら~想像もできなかった。同じことは、ウィリアム・マッセナ(William Massena)氏とともに活動するラウル・パジェス(Raúl Pàges)氏や、ドミニク・ルノー(Dominique Renaud)氏、ジュリアン・ティシエ(Julien Tixier)氏と協力してセキュラーパーペチュアルカレンダーを手掛けたファーラン・マリ、そしてもちろんマックス・ブッサー(Max Büsser)氏によるM.A.D.1についても言える。これらの時計はすべて、時計業界のユニークな瞬間を象徴する存在としてコレクションに加えるべきものだと感じているし、このような潮流が今後も続くことを願っている。
SpaceOne Tellurium
スペースワン テリリウム。グレード5チタン製ケース(ブルーまたはブラック)、サテン仕上げ、ポリッシュ仕上げ、サンドブラスト仕上げ、幅42mm、ラグからラグまでが50mm、厚さ16mm、30m防水。アベンチュリンまたはブラック文字盤、ポリッシュ仕上げチタン製スター、PVD加工チタン製アパーチャー(絞りの開口)、時・分表示、日付・月表示、太陽を中心に地球と月の正確な位置を示す惑星歯車。自動巻きムーブメントCal.P024 H4(ソプロード製)、テオ・オフレ設計のモジュール搭載、スイスで製造・パリ組み立て、約38時間パワーリザーブ。幅22mmから18mmにテーパーするファブリックストラップ、チタン製ピンバックル。